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2007年1月 8日 (月)

異同問題



考える人(No.19)の養老孟司氏の「モノ・教育・同一性」が,面白い.いつもながら緻密さの無い文章ですが,色々アラ探しをしても不毛で,色々汲み取るように読むべき文章だと思います.



じつは「同じ」ということを考え始めたときに,「同じ」を表す西欧系の言葉の意味が気になった. same という語は,じつはどういう意味か.「同じ人」というときに,これが使えることは間違いない.それなら「同一性」というときはどうか.identityという言葉が浮かぶ.一卵性双生児は identical twinsである.




双子をどう見たって同じじゃないか,ということになるから,identical twinsなのである.



時間的同一性や空間的同一性の重みが,西欧語の方が,日本語の場合よりも小さいようです.


上記文章では,次の二つのグループを対立させていました.



  • 意識・情報・概念化・様々なものを同一視する

  • 無意識・身体・感覚・様々なものの違いに気付く


西欧語は前者を優先し,日本語では後者を優先しているのではないか,と議論が続きます.


生物で言えば目や耳などの感覚器,機械でいえばカメラやマイクロフォンなどのセンサーは,上記二つのグループで言えば後者に属します.例えば文字認識機械(OCR)は,スキャナやカメラで文字の画像を計測し,どのような文字であるかを同定します.このとき,例えば「あ」という「同一の」文字が,フォントや書き手の癖や書くときにつかったペンやスキャナのノイズなどによって様々な「違った」パターンで計測されます.文字認識機械の凄さは,同一文字が持つ様々なパターンの「違い」は無視して,違う文字間のパターンの違いには気付く,そのカラクリにあります.これは,上記養老氏が指摘している異同問題そのものです.


異同問題の多くは,工学的装置においては,ソフトウェアが解決していて,このソフトウェアが実現しているアルゴリズムは,上記二つのグループのうち前者に属します.(「身体を含んだソフトウェア」に関する研究こそが実はニューラルネットワークの研究の醍醐味でもあるはずなのですが,そのような研究は少数です.)例えば固有空間法と呼ばれる文字認識の常套手段では,この異同問題を統計処理で解決しようとします.すなわち,「あ」とか「い」とか書かれたパターンを山ほど集めてきて,「あ」に属するパターンが示す「違い」と「い」に属するパターンが示す「違い」を,平均と分散で表します.そして,新しく計測した文字が「あ」か「い」かを判定する場合,それぞれの平均パターンとの「違い」をまず計算して,次に,その「違い」が文字「あ」が示す分散の範囲内か,それとも,文字「い」が示す分散の範囲内かを計算します.それぞれの文字が示す分散を無視することで「同一」とみなすわけです.このようなアルゴリズムは,脳を解剖しても分かりません.上記文章で「無意識」とか「(同一と判定できることが)前提」とかとアッサリ記されている,まさにその部分を機械的に実現しようとする一派が,工学の分野に居ます.異同問題は,そのような一派に属する者にとって,何十年も前から問題であり,しかも工学的なシステムとして実現するための「解決」を図り続けている問題でもあります.その一派に属する西欧人と日本人とでは,取り組んでる問題の位置づけが違うかもしれないな,と,上記identityという語が持つ意味合いの違いの指摘を見て思いました.


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