2020年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« レーザーー墨出し器 | トップページ | 歩行者用の信号機 »

2007年2月16日 (金)

下流志向




本書の主題は「学びからの逃走・労働からの逃走」というものである.



「オレ様化する子供」や「ニート」について考えるための拠り所を提供してくれる本.すこぶる面白い本でした.


キーワードの一つは,時間.


労働主体と消費主体の二種類の主体が出てきます.労働主体は,働いて,周囲の人が評価してくれて,肯定的な評価を与えられた後で自分の有用性の確証を得る.一方,消費主体は,貨幣と商品の同時交換によって自分の主体性の確証を得る.こういった事柄を指摘したあと,教育も労働も,取り組んでから意義を理解するまでに時間がかかるため,消費主体にはその意義を理解することが困難であると指摘が続きます.そして,家庭内労働の減少などにより,家事手伝いを通じて主体性の確証を得るのではなく,人生の最初期から消費主体として社会に参加し主体性の確証を得る子が増えつつあるのではないか,という仮説が述べられます.


労働主体は,労働を通じて自分と自分の周りの人とのダイナミズムに変化を作り出します.そのダイナミズムは,自分の周囲に,親しい人のクラスタを作ること寄与する.一方消費主体は,貨幣と商品の交換のダイナミズムはあっても,人間関係のダイナミズムには欠けている.同書では,リスクヘッジには,そのような親しい人のクラスタが極めて重要であることを指摘して次のような記載があります.



リスクヘッジというのは「集団として生き残る」という明確な目標を掲げ,そこで集団的に合意されたプランに従って,整然と行動する人のみが享受できることなのです.



読後,いろいろ考えたくなります.


学ぶ前には学ぶことの意義を理解できず,定量化もできない.このとき,例えば「大学の学費の適正な金額」をどうやって見積るのか,このことは気になります.あと,官僚制は労働の一形態だと思うのですが,官僚制の定義には「誰がそれをしても同じ」というような消費主体と同様な傾向があったのではなかったか.


同書の内容を理解するには,私にはもう少し時間が必要です.


あと,同書は,町の「都市化」が,そもそも利便性の向上などを通じて「時間をゼロにするという要請から出てきた」と指摘しています.そして,消費主体に欠落している「時間性」の回復策として,次のような素朴な案を提示しています.



ルーティンを守ることです.日課を崩さない.



このことは,そのとおりな気がしました.そういえば,GTD(参照)によるスケジュール管理の基本も,週末に計画をみなおし,スケジュール管理のリズムを作ることにありました.


時間とかリズムとか生活と聞いて思い出すのは,三木成夫の本です.生き物は呼吸のリズムを刻みながら生きていくし,確か都市も臓器と筋肉系を持つ生き物になぞらえてなかったか.都市は,「時間をゼロ」にする機能を提供するために,規則正しく通勤時間に人が集まったり規則正しく「リズムを刻みつつ」機能しているのではないか.…都市と時間についても,気に留めようと思いました.


転勤を繰り返してサラリーマンとして働いてきて,退職して,孤独になったおじさん(私の○年後)は,親しい人のクラスタ,同書中で引用されている用語でいうところの親密圏を渇望するはずです.少なくとも,私は確実に渇望します.日常の親密圏がほしいとき,例えば宗教的な「講」のようなものがあれば,救われる気がします.同書は「二十一世紀は(中略)宗教的な時代になる」と指摘して閉じられています.この本を読んで,なんとなく,そうかもしれないと腑に落ちてしまいました.自分の老後の親密圏.この本は,そんなことまで考えさせてくれます.



下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち



  • 出版社/メーカー: 講談社

  • 発売日: 2007/01/31

  • メディア: 単行本





海・呼吸・古代形象―生命記憶と回想

海・呼吸・古代形象―生命記憶と回想





« レーザーー墨出し器 | トップページ | 歩行者用の信号機 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 下流志向:

« レーザーー墨出し器 | トップページ | 歩行者用の信号機 »