インテルとマイクロソフトのススメ
えぇ、ホッテントリメーカーを使いました。
センサネットワークを使ってヘルスケアとか農作業管理とか鼻息が荒いわけですが、ふたをあければ、気温を測って無線で飛ばしてモニタする「だけ」で終わったりします。現場で本当に使えるシステムを作るんだという迫力を感じるシステムにはなかなか御目にかかれません。
センサネットワークが普及するには「キラーアプリが必要だ」と随分昔から言われていて、右往左往して、まだ見つかるには至っていません。MEMSで小型低消費電力なセンサデバイスができて、無線通信により配線することなくデータを収集する。その魅力はシステム実装の自由度の高さのはずで、その自由度の高さは、個々の事例にあわせてカスタマイズすることに活かすべき特質なのでした。
ところが、センサネットワークに詳しいエンジニアと、ヘルスケアとか農業の現場の知識との間に大きな溝があって、エンジニアは相手が何を欲しているかを理解せず、現場の人はエンジニアリングで近未来に何が出来うるかを想像できません。
この大きな溝を埋めるには、エンジニアかその近くの人が現場に入って、システムとして何が必要とされているかを理解する必要があって、その理解も現場にまみれているうちにおのずと分かってくるというようなアプローチではなくて、科学的に調査する必要があります。具体的には、民族誌学が、そのような調査法を提供してくれるようです。
インテルには、センサネットワークシステムをぶどう園の管理に応用するために民族誌学的な手法を適用した優れた研究があります。また、ヘルスケアに応用した事例もあるようです。
前者においては、ワイン農場で農家の人が知りたいのが「気温」とか「湿度」とかではなく、「ブドウに病害虫が発生しやすい状態への警報」であることをつきとめ、その警報を発するには何を測れば良いかを農学部の教員と研究し、測るべき対象の計測に適したセンシングデバイスを設置して、ようやくシステムが完成してました。気温センサノードを設置しただけのようなトイシステムとの違いに呆然とします。
エンジニアが、自分にできることを現場で使ってみたくなって、現場にすでに蓄積されている高度な専門知識を知ることなく、トイ・システムを押しつける。それはヘボいことですし、ひそかにエンジニア自身も自分がヘボであることに薄々気づいていたりする。気づいていながら押し付けるのは、本当に使い物になるシステムを作るための方法論を持ち合わせていないことに大きな理由があるのではないか。
インテルとマイクロソフトは、どうやら、民族誌学の研究チームを持ち合わせている模様で、現場を調査して、現場のためのシステムを「本気で」構築することを試みていて、民族誌学実践法の国際会議を2005年から毎年開催しています。今年で4回目。面白そうです。
インテルもマイクロソフトも、「穴を掘るなら水が出るまで」というか、「センサネットワークに手を出すなら、本当に有用なものができるまで」徹底的に考えて、実践して、トイ(おもちゃ)ではない本物のシステムを作り出そうとしているように見受けます。
べた褒めするのは悔しいのですが、インテルとマイクロソフトのこういう徹底的な姿勢は、見習いたいところだし、ホッテントリメーカのご宣託どおり「インテルとマイクロソフトのススメ」なのでした。
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