今日は、読書の話題の多い日みたいだ。
【主張】読書週間 本好きの子供に育てよう
秋の夜長、一日でも二日でも携帯電話を閉じ、テレビを消して、ひたすら読書に時間を割いてみたらどうだろうか。
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20081027/1225064842
で、読むというのはだね。
三途の河や針の山の景色が、丁度覗き眼鏡を見るように、はっきりと見えるのでございます。
この光景がきちんと脳裏に浮かび、その含みを理解するということなんだよ。
中学に上がる前の子供のころは「秋の夜長」なんてなかった。夜8時過ぎには寝ていた。わたしは病弱だったから学校を休む日が多くて、そういう日は暇で読書日和だった。(学校を皆勤な元気バリバリの子はいつ本を読むのだろう。)
病気で休んでいる日は、ひまで、そんなときは学研の「ひみつシリーズ」とか、少年探偵ロイブラウンとか(あ、いまでもあるんだ)、そんな活字の大きさの対象年齢どおりの本を、今思えば親が与えてくれていて、読むことが多かった。でも圧倒的なインパクトをわたしに与えたのは、小学校5年生のときに生まれて初めて読んだ、ルビのふっていない文庫本だった。父がひょいと渡してくれた本だった。
生物記―その不思議な生活 (1963年) (現代教養文庫) [古書] (-)
蝶の口吻が二つに分かれていることとか、そういうオトナな知識も新鮮だったけれども、それよりなにより、たくさん掲載されている実体顕微鏡の写真とか生体の図が子供の眼に強烈だった。リアルで、少しグロテスクで。「三途の川とか針の山」ではなかったけれども、生き物の多様さや生き死にが描かれていた。
それらの写真とか図を覗き見ながら、分からない文章(全体の9割以上分からなかったと思う)を読み飛ばしながらも、でもワクワクしながら、背伸びして、ページを繰り続けたのがわたしの「読書の原体験」だ。その後30年近くの間に10数回引っ越して小学校の頃に持っていたもののほとんどすべてを捨てたけれども、でも、この文庫本は今でも手元にある。
長いけど、下に目次を掲載。それぞれ5ページとか10ページ程度の小文で、著名な学者さん(なのだろう)が書いたものの翻訳。
- はち
- あり
- はえ
- ちょう
- せみ
- ほたる
- かまきり
- げんごろうとあめんぼ
- のみ
- くも
- むかで
- みみず
- かたつむり
- かえる
- かめ
- もぐら
- やどかり
- えぼし貝とふじつぼ
- ひとで
- かに
- いか
- たこ
- たつのおとしご
- ひらめ
- あんこう
- 深海魚
- くらげ
- さんご
- 海綿
- ガラス海綿
- こけ
- 死物を片附ける植物
- 虫を食う植物
- 植物と日光
- 植物の旅
- 細胞の造形(エルンスト・ヘッケル)
最後の章だけ、著者名を記す。リアルでグロテスクな生き物の図を見続けたあとの最後の章「細胞の造形」には、放散虫の実体顕微鏡の写真が掲載されていた。この幾何学的に美しい細胞の造形の図は、その後のわたしの人生に少なからぬ影響を与えたと思う。万足卓の編集の賜物だったのかもしれない。この1冊だけでも、わたしは父に感謝している。
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