徳政令
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天皇はなぜ生き残ったか (新潮新書) 著者:本郷 和人 |
読了.後醍醐天皇に対する(わたしが勝手に持っていた)オカルトなイメージを修正できたのも収穫.この本で,九条道家の徳政令に関連して書いてあったことを備忘.
- 「徳」は,もとに戻す,の意味を内包している.中世では過去に理想や栄華があって,その昔を仰ぎ見る.
- 徳政の類義語「徳治」は,大漢和辞典によると次のとおりとのこと
為政者が,徳を持って世を治めようとする主義.(中略)即ち,無為にして治まることをその理想とする.…法家の法治主義と対蹠的な政治思想である.
- 「徳治」と「法治」は対を成す概念
- 雑訴の興行方法を二種類に分けてみる
A: 法に準拠するタイプ B: 法に拠らないタイプ
Aは裁定者が法規範に照らしあわせて判決をくだす.Bは成文法ではなく,社会が共有する通念や常識に準拠して判決をくだす.
- 当時,幕府は御成敗式目に準拠するAタイプ,朝廷は人々が納得するかどうかを重視するBタイプを採用した.
- 幕府と朝廷でタイプが違ったのは,強制力の有無ではないか.幕府は誠実な統治を目指し,軍事による強制力を背景に,法治による公平な権力へ進化していったのではないか.
- Aは社会に対して裁定者の意思を厳然と示すことができる.Bは世の動向に追随しなければならない.幕府こそが歴史の動向を創造できた.
徳政令を発する人は,その人が考える「世の動向」に追随して,法令から自由に号令している.現代において,法治を強制する力を立場上は発揮できそうにみえる人が,発揮しないのはなんでだろうと思う.選挙で為政者を選ぶときに「徳治タイプ」にどの程度魅力を感じていたかは省みてもいいかな,とも思う.
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「徳」か「法」かという対立軸が西洋を含めた世界でどの程度普遍のものなのかを知りたい.
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