就活生を救う意識改革 - 加藤智将
就活生には、“ナビサイトだけではなく、大学の就職課やジョブパークを活用する”という意識の改革こそが必要なのである。
会社から学生への情報流通経路を確認しようという視点は、とても面白いと思う。
大手から中小まで全国の会社の情報を各学生が取得できるわけもなく、海外を視野に入れなければ、多くの場合「全国の大手」と「地元の中小」の会社がターゲットになるのではないか。「地元」は関東とか中部とか、そのくらいの広さを持つ地域を指す。
大学が学生におこなう就職関連のサポートは、学科を単位とするところが多い。地元の会社の情報は、各学科の「就職担当」の教員を経由して学生へと伝わる。各学科には「就職担当」という役割があり、教授・准教授が毎年順番で担当する。就職担当になると教員は、毎日沢山の会社の人事課の人と会って情報交換することになる。就活期間中の就職担当の負荷は極めて大きい。会社の人との面会で長時間拘束され、内定に関する各種トラブルに対処し、なかなか決まらない学生を慰めたり激励したりする。ビール券の話とか昔はエピソードもあったようだが、とっくの昔にそのようなエピソードは皆無になっている。
それぞれの大学は、地元の企業に専用の採用推薦枠を持っていることが多い。すなわち、「貴校から○人の学生を採用したい。学生を推薦してほしい」といった依頼が来る。人気の企業であれば学生が集中し、その学内選抜の手続きも就職担当の仕事となる。この優先枠人数は景気の悪化で当然減少しつつある。しかも昔であれば大学が推薦した学生を当の会社が不採用とすることは稀であったが、昨今は面接で不採用と判断する事例が普通に見られるようになった。学生から見れば「有力企業の人事と面接できる」ことだけが魅力のシステムとなっている。特定の会社の推薦枠に入った学生は、その会社からの合否の連絡がくるまで他の会社からの内定を保留したり辞退したりしなければならず、そのタイミングによって様々なトラブルが起こる。
それはともかく、大学学生はナビサイトと学科の就職担当の双方を利用する。学科の就職担当は、大学に会社から送付される資料の処理や各会社から来る人事課の人との会談で忙殺され、新規の会社を開拓する余力はない。自分の学科の学生の誰の就職が決定し、誰が未定のままかの情報管理は、おそらく多くの大学で、学科の就職担当の教授・准教授がおこなっているのではないかと思う。この情報管理は簡単ではなく、相当の相応のコストをかけておこなうことになる。その間、当該教員が研究・教育のパフォーマンスを維持するのは至難の業である。
大学の就職課や就職担当に資料を送付するという最初の突破口を知らない中小の会社があれば、その会社に関する情報が学生へと届く確率は極めて低い。しかし、大学卒業生を採用したいと考えている会社が、その手の(非公式ではるものの常識となってる)手続きを知らないとは思えない。ただし、資料だけを送付する会社と、人事課が大学就職担当と直に会った会社とでは、後者の情報が学生に伝わる確率が高い。就職担当も学生に会社を薦める際には神経質になっており、学生との相性や会社の信頼度の評価に気を使う。そしてその評価は、人-人の会話の感触に依るところが大きい。このへんの機微に頓着してない会社はあるかもしれない。
追記
学生の「大手志向」が全く無いとは思わない。学生は就職に際して人生設計をするわけであり、会社を選ぶ際に倒産や規模縮小の可能性の高低を大いに気にすることになる。学生は、会社採用において新卒が優先されることを恐れと共に知っており、仮に自分の会社が将来倒産した際に再度別の会社に就職することが極めて困難であることを知っている。一寸先は闇かもしないけれども、出来る限り情報を収集し、先のことを可能なかぎり予測することは当然の行為である。会社の規模と倒産の確率の間に相関が全くないとは考えにくい。このような状況で大手の会社を志向する学生全員に、事実を直視せずブランドのみを希求する浅薄でお子様なイメージを塗りつけるのは間違いである。閉塞感は強い。起業することや海外に出ることも含めて、選択肢を広げることが閉塞感を和らげることなのだとは思う。
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